手漉き和紙

更新日:2025年02月03日

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和紙作りの歴史

吉野町は古くから「和紙の里」としてその名を知られていました。いつごろから吉野の地で紙漉きが行われるようになったかは定かではありませんが、7世紀の初め、大陸から伝えられた製紙技術は、朝廷や寺院に納めるのに都合のよい土地で行われたのであろうという説もあります。その意味では、水に恵まれた大和の国で定着したとしても不思議はありません。また、平安遷都後、紙の生産は吉野山間で盛んになり、広くその名が知られるようになりました。そして明治中期までは、国栖地区を中心に和紙の原料である楮が栽培され、国栖村の約半数にあたる300戸で和紙作りを行っていました。また、このような状況を谷崎潤一郎は『吉野葛』の中で"…あたかも、漁師町で海苔を乾かすような具合に長方形の紙が行儀よく板に並べてたてかけてあるのだが、その真白な色紙を散らしたやうなのが街道の両側や丘の段々の上などに高く低く寒さうな日に…"と表現しています。

しかし、このような盛況も第2次世界大戦を境に需要が減り、洋紙におされはじめました。しかし近年、高級和紙の良さが再認識され、その優れた風合いとねばりの強さが求められ、生産に活気を呈しています。

和紙が出来るまで

普通、和紙が出来るまでには48回の工程が必要といわれ、しかも厳寒期の12月から5月にかけて長時間に亘り水仕事を行うため、たいへんな苦労を伴う作業です。その中でも代表的な作業を紹介します。

遠方に山々が見える浅い川の中で、1人の男性が、半円形に広がった白くて細長い物体を持っている写真

1.白楮晒(川晒し)
身を切るような厳寒の吉野川で、丹念に白楮を何度も何度も水洗いします。この作業を十分に施しておかなければ、すぐれた和紙は生まれません。

室内にあるテーブルの上で、大きなザルの後ろに立つ一人の女性が、切り刻まれた白い物体を手に持ち作業している写真

2.除塵(ちりきり)
川晒しできれいになった楮でも、小さな埃や不純物が混じっているものです。それを一つ一つ丹念に取り除くことでねばりのある和紙が生まれます。

室内で、一人の男性が、左手に打ち棒を持ち構えている写真

3.紙素打ち(かみそうち)
紙漉きにかかる前に、楮は丁寧に叩解されます。柔らかく腰のある和紙を作るのには欠かせない作業の一つです。

大きな釜の中で煮たれられた麺状の物体を、棒ですくい上げている写真

4.釜たき
目に見えない不純物を取り除く作業で、大釜に楮と木炭(あく)を入れて、煮立てながら慎重にかき混ぜます。その後あく抜きをしてやっと出来上がりです。

室内で、一人の女性が、茶色の液体を木枠に入れて水で漉いている写真

5.紙漉き
たたきつぶされ紙素になった楮は、漉槽の中に入れられ、木糊の液を加えられて漉かれます。スダレの上に漉き上げられ、積み重ねて水をきります。

屋外で、一人の男性が、板に貼られた白い物体を天日干ししている写真

6.板張り乾燥
いよいよ最後の工程の一つです。漉きあげられた紙は、干し板に貼り付けられて天日で乾燥され、やがて製品として搬出されることになります。

和紙の種類

赤色の下地の上に置かれた、様々な色の和紙が、重なって並んでいる写真
和紙の種類
種類 詳細
宇陀紙 宇陀紙は、掛け軸の総裏紙として使われる。また、白土を入れて漉いてあるのでやわらかみがあり、虫がつきにくく、丸めても弾力で戻らず、静かにそっと納まるという特徴がある。
美栖紙 漉いた紙をすぐに板に張り付ける(簀伏せ)ため、柔らかみがあり、湿度の変化があっても紙幅に伸縮がなく、表装用中裏紙として欠かすことのできない和紙。
吉野紙 美栖紙と同様に簀伏せをして作られる。特徴としては、薄くてきめが細かく、漆濾しを行う場合にはなくてはならない紙。
吉野杉皮和紙 吉野には「吉野材」という全国的に有名なブランドがあり、製材する際に棄却する杉の樹皮を資源として有効活用しようという観点から生まれた紙。吉野杉の内樹皮と楮の繊維を混ぜて漉きあげることで、独特の暖かみのある色彩と手触り感の良い紙が出来る。色彩のおもしろさから、洋風クラフトなどの製品にも馴染み、様々な工芸材料として期待されている。
草木染め和紙 和紙の原料である楮(こうぞ)に、桜・あけび・ねむ・トマト・ヨモギ・アイ・サカキなどの樹皮を炊きだして混ぜ合わせたものを原料としてかみにしたもの。吉野ならではの植物の色彩が喜ばれている。

この記事に関するお問い合わせ先

吉野町役場 産業観光課
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