吉野宮のイメージと国文学

今でこそ、吉野といえば"桜の吉野"ですが、かつては"雪の吉野"であり、さらにその前の飛鳥時代・奈良時代では"川の吉野"でした。飛鳥時代・奈良時代の人々がみた吉野のイメージを、漢詩や万葉集の詩とともに見てみましょう。


万葉集の世界

『万葉集』には4500余首の歌が納められていますが、その中に吉野が詠まれた歌は88首を数えます。地名の解釈等でこの数は変動しますが、今の奈良市(約250首)や明日香村(約135首)に次いで、たくさんの歌が詠まれているのです。


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喜佐谷

吉野川と三船山


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象の小川

青根が峯


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夢のわだ

吉野川(吉野町六田のあたり)


柿本人麻呂の歌

長歌を形成したことなどでも知られる柿本人麻呂も幾つかの歌を吉野で詠んでいます。日本の国文学史にとっても、吉野は大切な場所といえます。


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吉野川(吉野町宮滝のあたり)


漢詩と吉野

日本の漢詩の出発点の一つが『懐風藻』です。この中に吉野を詠んだ漢詩があるので、吉野は日本の漢文学の始発の場所と言えるでしょう。この詩は吉野町龍門地区のあたりを描いています。飛鳥時代・奈良時代の人々は、宮滝以外の場所も訪れていたようです。


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龍門の景色

【参考】吉野町内の位置関係


【書下し】

駕を命せて山水に遊び、長く忘る冠冕の情。安にか王喬が道を得て、鶴を控きて蓬瀛に入らん。



宮滝周辺の万葉歌碑



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番号

内容

作者

書き手

場所

(1)

滝上乃三船山従秋津邊...

詠み人知らず

犬養孝

中荘温泉

(2)

かはず鳴く吉野の川の...

詠み人知らず

上野誠

吉野歴史資料館前

(3)

よき人のよしとよく見て...

天武天皇

上野誠

吉野歴史資料館横の丘の上

(4)

国栖らが春菜つむらむ...

詠み人知らず

福井良盟

吉野歴史資料館横の丘の上

(5)

やすみししわが大君のきこしめす...

柿本人麻呂

武田祐吉

吉野宮滝野外学校前

(6)

見れど飽かぬ吉野の川の常滑の...

柿本人麻呂

上野誠

河川交流センター駐車場

(7)

吉野尓夏實之河乃河余抒尓...

湯原王

西本願寺本より

菜摘十二社神社

(8)

みよしのの象山の際の木末には...

山部赤人

鹿児島寿蔵

桜木神社境内

(9)

虎に翼を着けて放てり


上野誠

桜木神社前

(10)

皆人の命も我がもみよしのの...

金村笠

上野誠

喜佐谷公民館駐車場

(11)

皆人の恋ふるみ吉野...

詠み人知らず

上野誠

喜佐谷最奥部万葉の道入口

史跡宮滝遺跡の碑



旧道沿い

史跡宮滝遺跡の碑



吉野宮滝野外学校前

吉野離宮顕彰碑


末永雅雄

宮滝郵便局の道向かい付近